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高齢化と人手不足時代における人材活用

2026-06-22 00:00:00

人事労務コラム

台湾では高齢化が急速に進み、65歳以上人口の割合はすでに20%に達しています。一方で、高齢者の労働参加率は日本などの近隣諸国と比較すると依然として低い水準にあります。

深刻化する人手不足への対応が求められるなか、企業には人材活用の考え方を見直すことが求められています。ベテラン社員の経験やノウハウの継承、世代間の協働は、人材不足の解消だけでなく、企業の持続的な成長にも大きく寄与します。

こうした背景のもと、高齢労働者の就業継続を促進するため、台湾の労働基準法第54条が2024年7月31日に改正されました。改正後は、同条第1項第1号で定める65歳の強制退職年齢について、労使双方の合意により延長することがより強調される内容となりました。

また、台湾労働部は「労使双方による定年延長および定年後再雇用に関する参考ガイドライン」を公表しました。本稿では、その内容と関連法規を整理し、企業が実務上留意すべきポイントについて解説します。
 

高齢者の継続雇用には2つの方法がある

65歳に達した従業員について、企業が継続雇用を希望する場合、または本人が就業継続を希望する場合、実務上は主に以下の2つの方法があります。

1.定年延長(既存契約の継続)

この方法は、現在の無期雇用契約を継続する形となります。労使双方が定年延長について合意した場合、既存の労働契約はそのまま継続され、勤続年数も途切れることなく引き継がれます。

・労働条件の変更:
雇用者は、賃金や職位等の労働条件を一方的に変更することはできません。体力面への配慮や業務内容の見直しが必要な場合であっても、勤務時間や職務内容の変更には労使双方の合意が必要です。

・社会保険・退職金制度:
既存契約が継続されるため、労工保険、健康保険、職災保険および適用される退職金制度も原則として継続されます。ただし、旧制度の勤続年数や退職金清算、新旧制度の移行が関係する場合には、個別の確認が必要です。

2.定年退職後の再雇用(新規契約の締結)

この方法では、従業員が一旦退職手続きを行い、既存契約を終了した後に、企業が改めて雇用契約を締結します。

・契約形態:
台湾の「中高齢者及び高齢者就業促進法」に基づき、再雇用後は有期雇用契約を締結することが可能です。

・社会保険・退職金制度:
労働者が老齢給付を受給している場合でも、雇用者は法律に基づき新制度退職金(労退)の積立を継続しなければなりません。

また、老齢給付を受給しておらず、加入条件を満たす場合には、引き続き労働保険へ加入することができます。

なお、老齢給付の受給有無にかかわらず、再雇用後に就労する場合には、雇用者は労災保険への加入および労退新制度への拠出を行う義務があります。

◎重要な法的留意点

台湾労働部は2026年5月6日付の通達において、雇用者が採用時点で65歳を超えていることを認識した上で雇用した場合、その後に「強制退職年齢到達」を理由として解雇することはできないと明確に示しています。

一度雇用契約を締結した場合、その契約終了は労働基準法上の通常の解雇・整理解雇の要件に基づいて行わなければならず、企業は十分注意する必要があります。

務上の対応ポイント

継続雇用の希望が労働者側からであっても、企業側からであっても、協議にあたっては以下の点に留意することが重要です。

1.協議開始時期

法令上、協議時期に制限はありませんが、65歳到達の半年前から1年前を目安に、本人の業務評価や部門の人員計画を踏まえて協議を開始することが望ましいとされています。

2.柔軟な働き方の設計と公平な処遇

短時間勤務や職務分担の見直し等、高齢者に適した働き方を検討することが重要です。ただし、年齢のみを理由として不利益な扱いを行うことは雇用差別に該当する可能性があるため注意が必要です。

3.協議内容の記録保存

協議結果にかかわらず、日時・場所・参加者・協議内容・結論を記録した書面を作成し、保管しておくことが推奨されます。

台湾労働部のガイドラインでは、定年延長協議記録書の参考様式も提供されています。
 

コンプライアンス面のアドバイス

高齢者雇用に関する標準プロセスを構築する

人事部門は、今後1~2年以内に65歳へ到達する従業員を把握し、「定年延長(無期契約継続)」と「定年後再雇用(有期契約)」のどちらが適切かを事前に検討できる体制を整えることが重要です。

年齢差別防止を徹底する

評価や処遇の見直しを行う際には、「高齢だから」といった表現を用いてはなりません。

あくまで業務成果や本人との合意を根拠とした判断が求められます。

政府補助金を活用し、人件費負担を軽減する

台湾労働力発展署では、高齢者雇用を促進するための各種助成制度を提供しています。

・継続雇用補助

65歳到達後も同一企業で継続雇用した場合、継続雇用後6か月経過時点から、最初の6か月間は月額13,000台湾ドル、7か月目以降は月額15,000台湾ドルが支給され、最長18か月間利用可能です。

・雇用奨励金

公的就業サービス機関の紹介を受けた失業中の中高齢者を採用した場合、1人あたり月額13,000台湾ドル、高齢者の場合は15,000台湾ドルが支給され、最長12か月間受給できます。

ただし、補助対象要件、補助額、申請手続き等は年度ごとの制度内容や個別審査結果によって異なるため、最新情報の確認が必要です。
 

おわりに

高齢者人材の活用は、今後の台湾社会において避けることのできない重要な課題です。

中高齢者が持つ豊富な経験や知識を活かすことで、企業の競争力向上や持続的な成長にもつながるでしょう。

企業が労働契約制度を適切に活用し、政府の支援制度も積極的に取り入れることで、法的リスクを回避しながら人材不足への対応を進めることができます。