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従業員の副業を禁止できるのか?副業は会社に知られてしまうのか?

2026-08-24 00:00:00

人事労務コラム

近年、世界的な物価上昇を背景に、収入を増やすため、勤務時間外や休日に副業を行う労働者が増えています。フードデリバリーの配達員、カフェでのアルバイト、ネットショップの運営等、いわゆるパラレルワークが広がる中、多くの企業から次のようなご相談をいただきます。

「就業規則や雇用契約で、副業を全面的に禁止することはできますか?」

「副業の影響で本業勤務に支障が出た場合、会社はどのように対応すればよいでしょうか?」

1.原則として、副業の全面禁止は無効

企業としては、従業員に本業へ専念してもらいたい、あるいは健康面への配慮から勤務時間外の副業を控えてほしいと思うことがあると思います。しかし、台湾の法令上、副業を一律に禁止することはできません。

行政院労工委員会82年台労動一字第55646号函釈によれば、通常の勤務時間外は労働者が自由に利用できる私的な時間であり、使用者は原則としてこれに干渉することはできません。そのため、就業規則や雇用契約に「当社の従業員は一切副業をしてはならない」といった包括的な禁止規定を設けても、法律上は無効と判断されます。

もっとも、これは企業が従業員の副業を一切管理できないという意味ではありません。法律上、使用者は次のような場合には、合理的な範囲で副業を制限・管理することが認められています。

(1) 副業が本業の遂行に支障を及ぼす場合

夜間の副業が原因で、日中の本業において遅刻や早退を繰り返したり、業務中の集中力低下により重大なミスを起こしたり、会社に損害を与えたりした場合には、使用者は就業規則に基づき懲戒処分を行うことができます。

例えば、人事評価への反映、年末賞与への影響、懲戒処分等が考えられます。また、事案が重大な場合には、労働基準法に基づく解雇が認められる可能性もあります。

(2) 副業が競業行為に該当し、会社の利益を害する場合

副業先が自社の競合企業である場合や、本業で知り得た営業秘密や顧客情報を副業に利用した場合には、競業避止義務や誠実義務に抵触する可能性があります。

※注意事項:在職中の競業禁止と退職後の競業禁止の違い

労働者は在職中、使用者に対する誠実義務を負っています。そのため、在職中に競合企業で副業を行うことを合理的な範囲で禁止する規定については、法的な有効性が認められる可能性があります。
一方で、退職後の就業を制限する競業避止義務については、労働基準法第9条の1に定める以下4つの要件をすべて満たさならず、いずれか一つでも欠ける場合は退職後の競業禁止条項は無効となります。

・保護すべき正当な営業上の利益が存在すること

・労働者が営業秘密に接することのできる職位にあったこと

・競業禁止の期間・地域・職業範囲が合理的であること

・使用者が合理的な補償を支払うこと
 

2.副業時の労働保険・健康保険・労働退職金の取り扱い

従業員が実際に副業を行う場合、正社員として勤務する会社・副業先の会社のいずれにおいても、社会保険手続きには誤解されやすい点が多くあり、人事担当者は、それぞれの加入義務を正しく理解しておく必要があります。

項目 実務上の取扱い
労働保険 重複加入が可能であり、かつ加入義務があります。副業先が常時5人以上の労働者を雇用している事業所であれば、入社当日から当該従業員を労働保険へ加入させなければなりません。重複加入期間中であっても、保険加入期間が二重に加算されることはありませんが、将来、出産給付・傷病給付・老齢給付等を請求する際には、両方の勤務先の「標準報酬月額」を合算して給付額が算定されます(合算額の上限は現行の最高等級である45,800元まで)。
健康保険 重複加入はできません。労働保険とは異なり、原則として勤務時間が長い、または給与が高い主たる勤務先でのみ加入します。誤って重複加入した場合、健康保険署から元の加入事業所へ通知が送付されるため、これが正社員の勤務先が副業を把握するきっかけとなることがあります。
労働退職金 各勤務先が毎月拠出する必要があります。正社員・副業を問わず、実際に労務を提供している限り、各事業主は労働者の退職金制度(旧制度・新制度)に応じて、毎月法定の労働退職金を拠出しなければなりません。正社員の勤務先と副業先で拠出された退職金は、それぞれ独立して積み立てられます。

 

多くの労働者は「労働保険は重複加入できない」と誤解しており、副業先の人事担当者がこれを理由に加入手続きを行わないケースも見受けられます。しかし、このような対応は労働保険条例に違反します。また、個人情報保護法に基づき、正社員の勤務先の人事担当者は、従業員の同意なく労働保険局へ照会し、他社での保険加入状況を確認することはできません。実質、他社での保険加入状況を把握できるのは、従業員本人が保険加入記録を取得し、会社へ提出した場合に限られます。

3.会社代表者・人事担当者へのアドバイス

副業を行う従業員が増える中、企業には「全面禁止」という考え方から、「適切なルールによる管理」へと発想を転換することが求められます。

(1) 副業の申告・審査制度を整備する

就業規則において例えば、「在職中に副業を行う場合は、事前に会社へ届け出ること」というような規定を設けることが考えられます。この制度の目的は、副業そのものを禁止することではなく、競合他社での勤務に該当しないか、法令違反となる内容ではないか、本業に支障を及ぼすほど身体的負担が大きくないか等を会社が事前に確認・評価することにあります。

(2) 本業における評価基準を明確にする

人事管理の本質は、勤務時間ではなく成果とパフォーマンスにあります。従業員が本業のKPIを十分に達成し、会社の利益を損なうことや営業秘密の漏えいがないのであれば、勤務時間外の活動について一定の自由を認めることも、人材の定着やモチベーション向上につながる考え方の一つといえるでしょう。

適切な規程内容の整備と透明性のあるコミュニケーション体制を構築することで、企業は労使トラブルのリスクを低減できるだけでなく、従業員との信頼関係を深め、より良いパートナーシップを築くことができます。今後も法令や職場環境の変化に応じて継続的に制度・運用を見直し、健全で安定した労使関係の構築を目指していきましょう。\