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従業員が会社を辞める際の会社対応のポイント ~法令上必要な手続きと実務対応~

2026-08-10 00:00:00

人事労務コラム

従業員の離職に伴い、会社にはさまざまな手続きが発生しますが、これらを適切に行わなければ、労使トラブルや行政上のリスクにつながる可能性があります。特に台湾では、従業員が辞める際に会社が交付すべき書類や未消化有給休暇の精算等、日本とは異なる制度もあるため、適切な対応を理解しておくことが重要です。

今回は、解雇等ではなく、従業員自らが会社を辞める際、会社が対応すべき主な事項をご紹介します。

■ 退職意思および退職日の確認

従業員が会社を辞める際に関するトラブルで多いのが、「本人は辞める意思はなかった」「退職日に合意していない」といった認識の相違です。そのため、意思確認は口頭のみで済ませず、書面等、証拠として残る形で取得することを推奨します。

なお、会社の運用上問題なければ、退職届・メール・LINE等のチャットといった形式は問われません。重要なのは、「本人の意思」と「退職日」が客観的に確認できる状態にしておくことです。

■ 退職予告期間の確認

従業員が自主的に辞める場合、台湾の労働基準法第16条では以下の退職予告期間が定められています。

勤続年数 退職予告期間
3か月以上1年未満 10日前
1年以上3年未満 20日前
3年以上 30日前

なお、従業員がこの予告義務を守らなかった場合でも、労働基準法上の罰則はありません。

また、会社と従業員双方が合意している場合には、予告期間を待たずに退職日を前倒しすることも可能です。

■ 未消化の有給休暇および残業代休の精算

台湾では、退職日時点で残っている有給休暇および残業代休は、未消化分に相当する金額を支払う義務があります。

「会社を辞めるため有給・残業代休は消滅する」という運用は認められておらず、未消化分を精算しない場合は労働基準法違反となる可能性がありますので、辞める際には、残日数を必ず確認し、賃金と併せて精算するようにしましょう。

■ 会社交付書類の準備

◇ 服務證明書(在職・離職証明書)

台湾の労働基準法第19条では、従業員から請求があった場合、会社は「服務證明書」を発行しなければならないと規定されています。

服務證明書には、一般的に、氏名・在職期間・担当業務を記載しますが、従業員に不利な情報の記載は認められておりません。

なお、日本でいう「離職証明書」に近い性質の書類ですが、台湾では服務證明書という名称で運用されることが一般的です。

※会社都合退職等の非自発的離職の場合は、失業給付申請等に必要となる「非自願離職證明書」の交付が必要となります。

Q. 健保轉出證明は交付義務があるのか。

実務上よく問い合わせを受けるのが「健保轉出證明」です。これは健康保険の脱退手続きが完了したことを示す資料ですが、法令上、会社に交付義務が定められている書類ではありません。

一方で、転職先において健康保険加入手続きの際に提出を求められるケースがあるため、実務上は、「保險對象退保申報表」の写しや脱退完了画面等、脱退が完了したことを確認できる資料を従業員へ交付している会社も多く見受けられます。

健康保険署でも、加入先変更時には「保險對象退保申報表」の写しを本人へ交付し、新しい加入先へ持参させる運用を案内していますので、法的義務ではありませんが、従業員から依頼があった場合には、これらの資料を提供することを推奨いたします。

■ 引継ぎ・備品返却のリスト化

従業員が辞める際には、業務引継ぎだけでなく会社貸与物の返却確認も重要です。例えば、PC・社員証・入館証・デスクの鍵・社用携帯・制服・各種資料等を一覧化し、一つずつ確認することを推奨します。会社側・本人双方でチェックを行い、署名を残しておくことで、「返却した・していない」といったトラブルを防止できます。あわせて、システムアカウントの停止や各種アクセス権限の削除等、情報セキュリティ面の対応も忘れずに行いましょう。

円滑な離職手続きは、従業員との良好な関係を維持するだけでなく、不要な労使トラブルや行政上のリスクを未然に防ぐことにもつながります。あらかじめ社内フローやチェックリストを整備し、適切な運用を行うことをお勧めいたします。