台湾では当局が労働検査を実施しており、検査員が抜き打ちで来訪するため、企業は突然の対応を迫られます。
2024年の全国労働基準法違反は以下の状況でした。
・違反社数 6,326社
・違反件数 8,339件 (1社に複数の違反があったことを意味します)
違反企業は労働部のサイトに掲載され罰金が課されるため、コンプライアンスに注意が必要です。
(労働部公式サイト) https://announcement.mol.gov.tw/
労働基準法の違反状況 全国
期間 2024/01/01~2024/12/31
件数 計8,339件 (下表は上位7種、全体の約50%)
労働基準法の違反状況 台北市
期間 2024/01/01~2024/12/31
件数 計1,106件 (下表は上位7種、全体の約72%)
上述の違反を俯瞰すると、金銭や時間に関する違反が大半です。
以下に代表的な対策を紹介します。
1.勤怠管理を徹底する
労働基準法第30条第1項第5号は、雇用者の勤怠記録保存(5年間)を規定しています。
残業代を含む賃金支給状況と一致させるため業務時間の記録が必要であり、入退室記録をこれに代えることはおすすめしません。
(法務部公式サイト) https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawSingle.aspx?pcode=N0030001&flno=30
2.連続7日勤務を避ける
平日勤務の場合は土日が週休日になりますが、それらは各社の事情により休息日と定例休日に分類されます。
特徴として、休息日は労使同意のもとで労働が可能ですが、定例休日は原則として労働が禁止されています。
つまり、完全週休2日制の場合、連続7日間の勤怠打刻は定例休日の労働に該当する場合が多く、繁忙期には特に注意が必要です。
3.適切な割増賃金を支給する
以下は時給基準による割増率の概要です。
祝日の場合、短時間勤務であっても日給相当額の支給が必要です。
また、繰り返しになりますが、定例休日の労働は天災発生時等を除いて原則禁止であり、当該条件に該当しない場合は、割増賃金を支給しても違反を免れることはできません。
4.労使会議を開催する
時間外労働を実施する場合、前提として労使間で時間外労働に関する同意が必要です。
労働者3人以下の場合は個別同意で良いとされていますが、4人以上の場合は等数の労使代表による会議(中国語:労資会議)での同意が必要です。
労働基準法第32条第1項は、労働者に通常労働時間以外の労働をさせる場合、労働組合または労使会議の同意が必要であると規定しています。
(法務部公式サイト) https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawSingle.aspx?pcode=N0030001&flno=32
労使会議を開催するためには以下の手順が必要であり、これらを経ることで正式に労使会議の記録となります。
・労働者側代表を選挙で選出
・労使代表者の名簿を当局に届出(台北市の場合は労働局)
・労使会議の開催を労使代表に通知
・労使会議の議題を労使代表に通知
・労使会議を開催
・労使会議の議事録を作成し、社内に保管
労働検査は、遵守事項が多い規模の企業(例:30人規模で就業規則の届出が必要)が対象になりやすいほか、社員から当局への問い合わせ等が端緒になると言われています。
どうぞ日常のコンプライアンスにご注意ください。