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台湾における変形労働時間制の基礎 -制度の全体像と運用上の具体例-

2026-05-11 00:00:00

人事労務コラム

台湾では、「1日8時間・1週間40時間」の労働時間が法定で定められています。また、残業についても上限が設けられており、一定の範囲内で管理する必要があります。

一方で、業務の繁閑や業種特性に応じた柔軟な勤務を可能とする制度として、変形労働時間制(彈性工時制度)が設けられています。本稿では、これらの基本的な前提を踏まえ、変形労働時間制の仕組みと運用上の具体例について解説します。

1. 変形労働時間制とは何か

変形労働時間制は、業務の繁閑や業種の特性に応じて労働時間を調整することにより、繁忙期における人員不足への対応や、閑散期における労働時間の抑制を可能とし、結果として残業時間の削減および効率的な人員配置の実現を目的とするものです。

具体的には、一定期間内(2週間・4週間・8週間)で労働時間を分配することにより、特定の期間において法定労働時間を超える勤務をおこなわせたとしても、当該期間内で平均して法定労働時間の範囲内に収まっていれば、残業扱いとならない点が最大の特徴です。

2. 各労働時間制度の基本構造

■ 通常の労働・残業時間

台湾の労働基準法では、原則として以下がそれぞれ定められています。

・1日の通常労働時間は上限8時間、1週間の通常労働時間は上限40時間

・1日の残業時間は上限4時間、1か月の残業時間は上限46時間

・1日の合計労働時間(通常労働時間+残業時間)は上限12時間

■ “残業”に関する労使会議の同意を取得した場合

労使会議にて同意を取得した場合には、残業時間の上限について一定の緩和が認められます。

・1か月の残業時間は上限54時間、3か月の残業時間は上限138時間

※ただし、1日あたりの残業時間は4時間以内に収める必要があります。

■ “変形労働時間制”に関する労使会議の同意を取得した場合

労使会議の同意を取得し、変形労働時間制を導入した場合、特定の日の“労働時間”を8時間超とすることが可能です。

ただし最終的には、変形期間内で以下時間内に労働時間を収める必要があり、超過した場合は、“残業”としてカウントされます。

形態 2週間 4週間 8週間
法令根拠
(労働基準法)
第30条第2項
第36条第2項第1款
第30条の1
第36条第2項第3款
第30条第3項
第36条第2項第2款
業種制限 なし あり:サービス業や小売業、飲食業等(※1) あり:製造業や一部の特定業種等(※2)
1日あたりの
通常労働時間(※3)
1日で10時間を超えない 1日で10時間を超えない 1日で8時間を超えない
1週間あたりの
通常労働時間
1週間で48時間を超えず、
2週間で80時間を超えない
4週間で160時間を超えない 1週間で48時間を超えず、
8週間で320時間を超えない
例假日および休息日(※4) 1週間に1日以上の例假日および2週間で4日以上の例假日と休息日を設定 2週間に2日以上の例假日および4週間で8日以上の例假日と休息日を設定 1週間に1日以上の例假日および8週間で16日以上の例假日と休息日を設定
参照 https://www.mol.gov.tw/1607/28162/28166/28218/28220/32907/

※1:4週間変形労働時間制の対象業種は以下となります。
https://www.mol.gov.tw/1607/28690/2282/2284/2292/7231/

※2:8週間変形労働時間制の対象業種は以下となります。
https://www.mol.gov.tw/1607/28690/2282/2284/2292/7229/

※3:1日あたりの通常労働時間の上限は12時間となります(労働基準法第32条2項)。

※4:例假日および休息日の説明は以下となります。
https://www.mol.gov.tw/1607/28162/28166/28218/28226/81483/post

3. 変形労働時間制の具体例

変形労働時間制を導入した場合、業務の繁閑に応じて特定の日に通常労働時間を超える勤務を行い、別の日の通常労働時間を短縮することで、期間全体の通常労働時間を調整することが可能となります。以下に、具体例として適切なケースと不適切なケースを示します。

■ 適切なケース(4週間の変形労働時間制。期間内は残業なしとして計算。)

第1週 休息日 労働日
10時間勤務
労働日
10時間勤務
労働日
10時間勤務
労働日
8時間勤務
労働日
10時間勤務
例假日
第2週 労働日
6時間勤務
労働日
6時間勤務
労働日
6時間勤務
労働日
6時間勤務
労働日
6時間勤務
休息日 例假日
第3週 労働日
8時間勤務
休息日 労働日
8時間勤務
例假日 例假日 労働日
8時間勤務
労働日
8時間勤務
第4週 労働日
8時間勤務
労働日
8時間勤務
休息日 労働日
8時間勤務
労働日
8時間勤務
労働日
8時間勤務
労働日
8時間勤務

OK:4週間の総労働時間が160時間以内に収まっており、法定上限を遵守できている。

OK:長時間勤務日と短時間勤務日を組み合わせ、変形労働時間制を適切に活用できている。

■ 不適切なケース(2週間の変形労働時間制。期間内は残業なしとして計算。)

第1週 労働日
10時間勤務
労働日
10時間勤務
労働日
10時間勤務
労働日
10時間勤務
労働日
8時間勤務
労働日
8時間勤務
労働日
8時間勤務
第2週 労働日
10時間勤務
労働日
10時間勤務
労働日
8時間勤務
休息日 例假日 休息日 例假日

NG:2週間の総労働時間は92時間となっており、「法定上限である80時間」を超過している。

※超過した12時間分は残業として取り扱われることとなる。

NG:第1週に例假日が設定されておらず、「1週間に1日以上の例假日」の要件を満たしていない。結果として7日連続勤務の状態となっている。

※第2週に例假日をまとめて設定したとしても、この要件を満たしたことにはならない。


変形労働時間制は、業務の繁閑に応じて労働時間を柔軟に配分できる有効な制度であり、適切に運用することで残業時間の抑制にもつながります。

一方で、労働時間の上限管理や例假日・休息日の配置など複数の要件を同時に満たす必要があり、シフト設計や運用管理が複雑になりやすい点には留意して下さい。