HR Information System

会社備品購入費用と損壊時の賠償方法解説

2026-05-05 00:00:00

人事労務コラム

職場の実務において、安全装備を含む会社制服の購入費用や、従業員が業務中に不注意で設備を損壊した場合の賠償問題は、労使間のトラブルの原因となりやすいテーマです。特に離職率の高い職種やパートタイム従業員においては、企業側がこれらのコストを従業員に負担させたり、事故発生時に「給与からの一方的な控除」により対応するケースが見受けられます。しかしながら、労働基準法および関連通達に照らすと、これらの対応は違法と判断される可能性が高い点に注意が必要です。

 

会社制服・安全装備の費用負担は誰が行うべきか

■ 労務コストおよび福利厚生としての位置付け

多くの企業では、ブランドイメージの維持や安全確保のため、従業員に制服や安全靴の着用を義務付けています。これらに関する費用については、法的にも明確な見解が示されています。

行政院労工委員会(現:労働部)の通達(89年10月16日)によれば、制服とは「事業運営の目的のために、雇用者が労働者に対して業務提供時に着用を義務付けるもの」と定義されています。その目的が「安全確保」であれ「規律維持」であれ、いずれも企業の労務コストまたは福利厚生に該当します。

したがって、制服費用を従業員に負担または分担させることは原則として適切ではなく、企業が全額負担すべきものとされています。従業員が短期間で退職した場合であっても、その費用を従業員に負担させることは認められません。

 

■ 労働安全衛生上の義務

業務に安全リスクが伴う場合(例:鋭利物の取り扱い、有害物質への接触等)、関連法令により、雇用者には安全靴等の防護具を提供する義務があります。これは法的義務であり、従業員に購入を求めたり、費用を負担させることはできません。

 

■ 実務上のリスク回避策

新入社員が短期間で離職することによるコスト損失を防ぐため、企業としては以下のような柔軟な対応が考えられます。

・段階的な支給:安全に支障がない範囲で、初期は装備不要の業務に配置

・定着後の支給:試用期間後等、定着が見込まれる段階で制服を支給

・管理・返却義務:退職時の返却を義務付ける(未返却の場合は民事請求で対応)

※なお、未返却を理由に給与から直接控除することは認められません。

 

■ 備品損壊時の対応:給与からの控除は禁止

正社員・パートを問わず、業務中のミスによる備品損壊(例:食器の破損、設備の故障等)が発生した場合、給与から差し引く対応が行われることがありますが、これは労働基準法上明確に禁止されています。

 

■ 賃金控除禁止の原則

労働基準法第26条では、「雇用者は違約金または損害賠償として賃金を控除してはならない」と定められています。

ここでいう「控除」には、責任の所在が確定していない段階や、賠償額について合意がない状態での一方的な差し引きも含まれます。

 

■ 責任の明確化と協議の必要性

損害が発生した場合には、まず責任の所在を双方で確認することが重要です。

・経営リスクに該当する場合(設備の経年劣化、通常損耗等)は、従業員の負担とはなりません

・従業員の過失が認められる場合でも、賠償額については双方で協議のうえ決定する必要があります

合意に至らない場合は、雇用者は民事手続きによって解決を図るべきであり、給与控除による対応は認められません。

 

まとめ

制服や安全装備に関する費用は、企業の事業運営および労働者保護のために必要なコストであり、原則として企業が負担すべきものです。また、従業員による損害については「責任の明確化 → 協議 → 合意」のプロセスを経ることが重要であり、給与からの一方的な控除は認められません。

適切な制度設計と運用を行うことで、企業は法令遵守を徹底するとともに、不要なトラブルやブランド毀損のリスクを回避することができます。