一、解雇とは?
台湾での解雇は複数の種類あり、代表的なものとして経営状況や組織体制によるやむを得ない状況に基づく通常解雇と、故意の悪質な行為等に基づく懲戒解雇があります。
通常解雇の場合、労働基準法の規定に基づき、会社の閉鎖、廃業、解散、業務縮小、組織再編、または労働者が職務を遂行できない状況であることが実施条件とされており、これにより労働者は退職金の受給や失業給付等の社会保障を申請することができます。
これに対し懲戒解雇は、労働者が雇用契約や就業規則に重大な違反を犯した、正当な理由なく欠勤が法定の基準に達した、雇用者に対して暴力を振るったり重大な侮辱を与えた場合等に解雇されることをいい、その原因は労働者にあります。
二、雇用者による雇用契約解除方法
通常解雇の条件は以下のとおりです。
労働基準法第11条(概要)
1.廃業又は営業譲渡。
2.欠損又は業務縮小。
3.不可抗力による1か月以上の事業停止。
4.事業性質変更による人員削減、適当な配置換え不可。
5.労働者が担当職務の遂行において確実に能力不適格。
注意点として、労働者の不適格を理由とする場合、相応の証拠を以て立証が必要となります。
また、本条に基づく解雇に際しては解雇予告(※1)と解雇金支給(※2)が必要です。
※1 勤務3か月以上の場合、10日前予告。勤務1年以上の場合、20日前予告。勤務3年以上の場合、30日前予告。
※2 新退職金制度加入者の場合、平均賃金*0.5*勤務年数(且つ最大6か月分の平均賃金)
旧退職金制度加入者の場合、平均賃金*勤務年数(支給月数の上限設定なし)
注意点は、「事業性質変更」や「職務の遂行において確実に能力不適格」による解雇の場合、雇用者は、訓練や指導の実施、社内異動の検討等、解雇を避けるための措置を講じたことを証明する必要があり、証明できなければ不法解雇とみなされる可能性がある点です。これらの措置は、すべての合理的な代替案を検討した上で初めて雇用契約を解除できる、という「解雇の最終手段性原則」に基づき行われるもので、法律に明記されているわけではありませんが、裁判所の審査基準として一般的に採用されています。
懲戒解雇の条件は以下のとおりです。
労働基準法第12条(概要)
1. 雇用契約締結時に虚偽の意思表示。
2. 使用者、使用者の家族、代理人、同僚に対する暴行又は重大な侮辱行為。
3. 有期徒刑以上の確定判決を受け、執行猶予や罰金刑に代替なし。
4. 雇用契約又は就業規則に違反し、情状が重大。
5. 使用者所有の物品を故意に損耗、機密を故意に漏洩。
6. 正当な理由が無い欠勤が3日連続、又は6日/月。
注意点として、本条に基づく解雇は、その理由を知った日から30日以内に実施する必要があります。
なお、本条に基づく解雇に際しては解雇予告(※1)と解雇金支給(※2)は不要です。
三、手続き上の重要ポイント
・解雇予告期間と賃金
解雇予告期間は前述の※1のとおり、勤続年数に応じて規定されています。事前に予告しなかった場合、雇用者は解雇予告期間の日数に応じた賃金を支給する必要があります。
なお、当該解雇予告期間中、労働者は週2日間有給の求職休暇を取得でき、就職活動に利用できます。
・非自願離職証明書の発行
労働者は当該証明書をもって、政府に失業給付金を申請することができます。
仮に雇用者と労働者の間で離職理由や契約解除の合法性について争いがある場合でも、雇用者は当該証明書を発行する義務があります。