企業からよく寄せられるご質問として「社員旅行・忘年会(尾牙)・研修参加・会食出席等は労働時間にあたるのか?」という内容があります。
企業では、従業員が通常の勤務時間外にさまざまな社内外活動へ参加する機会があります。これらの活動が「労働時間」と認定され、残業代の支給対象となるか否かは、企業・従業員双方にとって重要なポイントです。本記事では、労働時間とみなされるかどうかの判断基準を整理し、典型的なケース毎に残業代支給の要否について解説します。
■勤務時間外活動時間取り扱いの基準
1. 参加に強制性がある(活動時間が企業の指揮命令下にある)
活動への参加が実質的に「強制」であり、従業員が企業の指揮・監督下に置かれている場合、たとえレクリエーション目的であっても労働時間と認定されます。
・不参加が人事評価や昇格に影響するおそれがある。
・会社から具体的な指示や参加の拘束がある。
➡このようなケースでは残業代支払義務が生じ、労働時間上限規制も適用されます。
2. 参加の自由が保証されている
参加はあくまで任意であり、出欠が評価や処遇に一切影響しない場合、活動は懇親・リフレッシュ目的とみなされ、労働時間には該当しません。
➡このようなケースでは残業代支払義務は生じず、労働時間上限規制も適用されません。
■ケース別の判断ポイント
ケース1:定時時間後の忘年会(尾牙)、新年会(春酒)
台湾で一般的なイベントである尾牙・春酒は、労働時間との関係が議論されることがあります。
完全に自由参加であり、欠席しても評価等に影響しない場合は労働時間に該当しませんが、司会・出演者・運営スタッフなど特定の従業員に準備や参加を義務づけた場合は、残業代支払義務が生じ、労働時間上限規制も適用されます。
ケース2:休日に行われる講座・研修
研修内容が業務に関連している場合、自己啓発的な内容である場合のいずれにおいても、任意参加であれば労働時間とみなされません。ただし、参加を義務化している場合は残業代支払義務が生じ、労働時間上限規制も適用されます。
■企業が注意すべきポイント
勤務時間外活動の扱いについて労使間で認識が異なると、トラブルにつながりやすくなります。そのため、企業は活動案内時に参加が任意であるか否か、労働時間に該当するか否かを明確にすることで労働争議が発生のリスクを軽減できます。
任意参加であることを示すために、以下のような根拠となる書類を保管しておくことを推奨します。
・参加意思確認票
・活動案内メール・社内文書
・参加自由を明記した通知文