台湾では1951年に徴兵制度が始まり、現在も憲法で国民の兵役義務を規定しています。
社会人となり働いている男性従業員は既に兵役を完了している、と思いがちですが、現職の台湾人男性従業員にも追加訓練(中国語:新制教召)が実施されています。
これは、国防部が予備兵のレベル維持措置として発表したもので、2022年から、4か月間の軍事訓練を終了した、通常は退役後8年以内の男性が追加訓練の対象となり、1回の訓練期間は14日間です。
36歳までの働き盛りの男性従業員が既に何度か招集されている、という話は日系企業でも耳にします。
従業員が訓練に参加する場合は公假(公務休暇)扱いとなり、企業は通常どおり賃金を支給する必要があります。
給与支給に関しては2022年1月以降、政府は税制上の優遇措置を設けており企業の負担を軽減できるようになっています。
具体的には従業員の追加訓期間中に支払った給与金額の150%を当該年度の課税所得額から控除することができます。但し、他の税優遇との重複適用は不可であり、優遇申請の際には、召集令(教召令)、休暇申請記録、公休証明、給与支給明細、解召証明等を添付する必要があります。
〈参考リンク〉
予備役軍人優遇規定(後備軍人召集優待條例)
従業員が追加訓練による休暇を取得した場合の給与控除方法(員工接受召集請假期間薪資費用加成減除辦法)
以下、台湾の兵役についてご紹介いたします。
始まった当初の兵役期間は陸軍が2年間、海軍と空軍が3年間でした。
以後、中台間の軍事的緊張の緩和や、若者への負担が大きいとの世論を踏まえ、2008年から期間が1年間に短縮され、2018年からは4カ月間の常備兵役軍事訓練になりました。
しかしながら近年軍事的な圧力を強める中国の脅威に対抗するために2024年からは「2005年1月1日以後出生の男子」に対して兵役期間が4カ月から1年間に延長となりました。
兵役に関する法令として兵役法があります。
同法第1条には、"中華民国の男性は法に基づき、皆、兵役に服する義務がある。"旨が規定されています。
また、対象期間は、満18歳となった翌年の1月1日から、満36歳の年の12月31日までです。
兵役内容は、出生年に応じて分類されるようです。
・1993年12月31日以前出生
未徴兵の者は兵役法第25条第3項の規定に従い、1年間の代替役(兵役に代わり公的機関で勤務)に従事。
・1994年 1月1日~2004年12月31日以前出生
4か月間の常備兵役軍事訓練。
・2005年1月1日以後に出生
兵役期間が4カ月から1年間に延長。
常備兵役軍事訓練期間中には毎月、給与も支給されます。
以前は6,510元/月ですが2024年からは26,307元/月(保険各種が引かれ手取り20,320元)と大幅な増額となりました。
徴兵年齢に達した男性の徴兵の流れを以下にまとめました。(兵役法第32条)
1. 兵籍調査:戸籍地毎で実施されウェブ上でのオンライン申請が可能です。調査後、高等教育機関在学中または有期懲役以上の刑に服している者は徴兵が延期となります。
2. 徴兵検査:戸籍登録住所に徴兵検査通知が郵送されるので指定病院で健康検査を受診します。 (通知受領から検査まで約10日)検査結果から兵役体格の判別を受け、常備役、代替役、免役に分けられます。
3.抽選:常備役、代替役となった男子は戸籍地にて抽選に参加します。入隊時期が決まる他、常備役の場合は軍種や兵科も決まります。これまでに習得した学部、学科の専門性を踏まえて陸軍、海軍、空軍に分けられます。
4.徴集:入隊
徴兵検査(健康検査)では精神的、肉体的に適否を確認されます。
心身に障害または持病がある場合、身長・体重等の指標が高値・低値の場合、家庭事情等、特殊な事情がある場合は兵役義務が免除されます。(兵役法第4條)
参考までに免役条件として以下があげられます。
・身長155㎝未満及び196㎝以上
・BMI(肥満の度合いを表す体格指数)数値が35以上または15以下
台北市政府兵役局のウェブサイトでは兵役体格区分の説明が記載されています。
実際の身長、体重、BMI、視力、聴力、股関節、土踏まず等の状況を入力することにより
常備役、代替役、免役かを模擬試算することも可能です。
サイトURL:https://servap3.docms.gov.taipei/bingo/bingo/
一般的には兵役除外となっても仕事にはそれほど影響がないと言われています。そのため、採用選考では免役だからと言って合否判断することは避けた方が良いかもしれません。
下記は、弊社男性社員の兵役経験談です。
・賃金は支給されるが、毎週末帰省すると全て交通費に消えてしまう。
・バランスが取れた食事を支給され、規則正しい生活が送れる。
・スマートフォンを見ることができる時間はあるが、終日ではないため就職活動の連絡が難しい。
・スマートフォンで通話はできるが入隊時にアプリをダウンロードさせられ、写真撮影は固く禁止されている。
・除隊時には、体格が良くなり、男らしくなったと言われた。
・集団生活を通じて良い先輩/後輩関係ができ、今後の人生に良い糧となった。